義足で頑張る日本人整形外科靴マイスター・ゲンキさんのこと~まず始めに~
2016年 04月 18日
「整形外科靴マイスター」 。
我が家のマイスターは日本で整形外科靴マイスターとして約20年
活動していますが、ドイツで17歳の頃から修行を始めて長い修業期間を経てマイスターとなり
日本に来日して現在に至ります。
簡単に言うと、整形外科、特に足の整形外科的知識を持った足の専門家と
靴職人が一緒になった職業。
日本だと整形靴(足に何らかの大きな変形や障害を抱えている方の靴)と足底板(足にあった整形外科的に分析された中敷きの事)は義肢装具士と呼ばれる方が製作していますが、ドイツでは、完全に職業も、作る範囲も義肢装具士とは別に、「整形靴マイスター」として専門分業化されています。
義肢装具士の方が膝から上の装具などを作るのに対し、膝から下の靴と一体型の装具(インシュー)や整形靴、足底板は整形靴マイスターが医師と連携して仕事をしています。
日本にはドイツ人整形外科靴マイスターが何人かいて、日本だとドイツの様に
国家資格の医療専門職として認められていませんので、専門分業化していない分、
まだまだ本当に足にあった整形外科靴=治療靴 それを助ける足底板=中敷きの理解と技術が
進んでいなく、その指導や普及に努めています。
(*そんな中で「日独小児靴研究会が立ちあがりました! http://jagss99.sakura.ne.jp/ )
最近では、日本人の方でもドイツ語をしっかりと学びながら、最初の3年半の修業期間からドイツで学び
ゲゼレ資格を経て(マイスターの前に取得しなければならない国家資格・ゲゼレの資格を得ることで
所得を得ることが出来るが、医師と連携してレセプト患者の靴などを製作したり御弟子さんを取ったり
独立工房を開くことはマイスターでないと出来ない) マイスター学校に入学し、ドイツの正式な
マイスター資格を取得する日本人の方々が出てきました。(現在私の知る所で3名かな。増えていたら
ごめんなさい!)
その中で、たまたま主人と付き合いのあるドイツの工房に整形外科靴マイスターとして勤務する
「ゲンキさん」の話は「腕のいい日本人マイスターがあそこの工房に入って、ドイツ語も凄く上手でさ~、
頑張ってるよ!」とドイツの工房を仕事で訪れた際にゲンキさんと会い、我が家のマイスターが
感心して話していたのを何度か聞いたことがあったのです。
とてものどかな田舎の元温泉治療で有名な地域で(森の中)
バイクが趣味で、趣味も堪能しながら整形靴作りに励んでいたゲンキさん。
去年の10月3日、その趣味のバイクで事故に遭い、事故に遭遇した瞬間に
右下腿は切断状態にあり、とにかく止血が大変だったと言います。
そのゲンキさん、もう2月には仮義足で1日フルで工房に立って居ます。
さすが、「足と歩行」を守る国ドイツだなあと感心せざるを得ませんでした。
ドイツは根本的に、糖尿病足病変で足を切断する可能性がある人やケガ、変形の酷い方、先天性の
足の病気を持っているかたなどに、医療保険から靴と足底版を支払い、通常の生活を送って貰う事で
健常者と同じように保険や年金を修めて貰い、結果的に国家経済を安定させて社会福祉国家を
持続して行きましょう「足と歩行」を守る考え方が徹底しているのです。
そんなドイツに、ゲンキさん 2003年2月にドイツに渡りました。
ドイツに渡ったきっかけを聞くと、まず大学でのサッカーの試合で膝に大怪我をした際に
装具と靴型装具を装着し、そこから整形靴に興味を抱いたこと。
大学でドイツ語の授業の一環で、ドイツ人教授からシステマティックなドイツ職業訓練システムを聞き知り、
また資格も発生すること(日本には上記で説明した通り靴型装具に特化した国家資格はありません)。
そしてなによりドイツの整形靴技術は世界でもっとも高い水準にあること。
あとは、海外で生活してみたい、という好奇心です。と語ってくれました。
その世界で最も整形外科靴技術と、その受容を可能にする医師を始めとする
整形外科靴専門職人が製作する整形靴と足底板(中敷)に対する理解、
それを支える医療制度と医療連携(医師~整形外科靴マイスター~医療フットケア師ポドローゲなど)
の中で仕事しながら、今ご自分も大きな怪我をきっかけにその恩恵とシステムに
また深い想いを抱いている事だと思います。
日本でももっと救われる足と歩行があるはずなのにと、小児障害児から糖尿病、リウマチ、
透析患者さん、外反母趾の酷い痛みで苦しんでいる方など様々な方々を見ていて、
日々日々我が家のドイツ人と自分たちに出来る事を考えながら活動しています。
まずは、整形靴マイスターが皆さんに出来る事をゲンキさんの人生や仕事を通して
色々と書いて行きたいと思います。
一番最近のメールで 「本義足が夏ごろ出来上がりの予定なので、疲れますしちょっと辛いですけど、
一日仮義足で工房作業で切るくらい機能回復しています。お仕事中にこちらにいらっしゃるのは大変だろうから、秋には通訳Mさんに会いにケルンかデュッセルドルフに行けるかも。」(ゲンキさんの所からは400キロ以上離れているんだけど・・・泣)
とメールがあった時は何だかとっても感動してしまいました。
まだまだこのシリーズ続きますので、宜しくです^^
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Dankeです!
(写真はベルリンの赤十字病院での糖尿病足病変の患者さんへの診察日のひとコマ。創傷ケア看護師さんが靴を履かせてあげています。立っているのは糖尿内科の医師、その他に整形靴マイスターと医療フットケア師ポドローゲも同席する週に2回の連携診察日・この後病棟も連携している皆で回りました)