ヨーロッパ&日本~時々石垣島^^を中心とした日独通訳者ライフ


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川口マーン惠美さんからドイツ報告

川口マーン惠美さんからドイツ報告


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川口マーン惠美さんからドイツ報告

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引 き続き、福島原発事故に関するドイツマスコミの報道の酷さにについてご報告。

エルネオス4月号にも寄稿したが、ドイツのマスコミは、ほとん どあり得ないほど低い確率の最悪の事態を、さも、明日起こるように報道し続けている。

それによれば、制御不可能となっている原発は、まもな く大爆発を起こし、日本全土は放射能に汚染されるらしい。いや、放射能漏れはすでに高い数値を示しており、風向きによっては東京の住民も危ない。



そ んな報道を受け、ドイツの薬局でヨードが品薄になっている。福島発の放射性物質は、東京から風か飛行機に乗って、いずれドイツにも上陸すると信じている人 がいるのだ。もちろん、あり得ることだ。チェルノブイリのときだって、大火災で舞い上がった死の灰は、ドイツの草原に降り注いだのだから。



こ れまで快適な東京で寛いでいたドイツ人特派員は、地震のあと、津波の現地に飛ばず、東京のスタジオから実況中継。これなら別にドイツにいても同じだ。

し かも15日からは、その東京も脱出し、大阪へ移った。そして、脱出先の大阪から、テレビ第二放送の特派員は、「東京の住民がこぞって脱出を始めれば、南へ 行く主要鉄道は一本しかなく、幹線道路も数少ないので、未曽有の大混乱が起こる」と、地図で示しながら予言してくれた。



哀 れな3700万の都市圏の住民が、かように貧弱な交通網しか持たないとなれば、どんな悲惨な事態となることか。そうするうちに、ドイツ大使館も、東京から 大阪へ引っ越しした。



テレビニュースの画面には、人々が駅で長い行列を作っている映像。そうか、東京では困難な脱出がすで に始まっているのか。しかし、その背景には「吉祥寺駅」という文字(ドイツ人には読めない)。つまり、映っていたのは東京脱出を図っている人々ではなく、 計画停電の後、電車の運転再開を待つ帰宅途中の人だったのだが、そんなことはテレビの前に息をのんで座っているドイツ人には想像もできない。ただ、特派員 はもちろん知っていたはずだ。



誤解を誘発するための報道は他にも多い。16日、大手新聞『ディ・ヴェルト』の一面には、マ スクをした日本人がまっすぐに正面を向いている写真が載った。

大見出しは、「死の恐怖に包まれる東京」。私の見る限り、これは通勤途上、大 きな交差点で青信号を待っている人たちだ。目を見開いているのは恐怖のためでなく、信号を見ているに違いない。それにしても、このマスクが放射能予防でな いことを、東京の特派員が知らないはずはない。そもそも日本人は、私が子供の時からマルクをしていたのだ。ただ、ドイツに住むドイツ人は、そんなことは知 らない。だから彼らにとって、これほど不気味な写真はない。





それに追い打ちをかけるように、宇宙服のような防御服 を着た人が、動かない被曝者を担架で運んでいる映像や、被曝検査を受ける不安そうな人々の表情が、何度も何度も映し出される。



17 日、私は予定通り、SAS(スカンジナビア航空)でドイツへの帰路についた。コペンハーゲン経由だ。ルフトハンザとスイス航空は、すでに成田就航を取りや めていたので、今回、この2社を使っていなかったことはラッキーであった。



成田空港の出国審査場では、再入国手続きをする 中国人の長蛇の列ができていた。そして、それを取材する中国のテレビチームの姿。中国政府は、自国民に危険な日本からの脱出を促し、成田空港へのバスまで 提供していた。出発ゲートでは、マスクをかけた屈強な欧米人を見かけた。花粉症でも風邪ひきでも、今まで絶対にマスクなどしなかった人たちだ。



私 の乗った機は、突然、北京に立ち寄った。北京で給油し、点検し、機内食と水を積み、乗務員の交代もした。成田では、非番の乗務員を降ろさず、機内の清掃さ えなかった。私たちは、掃除されていない飛行機に乗り込み、中国の安全な機内食と水をあてがわれたのだ。そして、コペンハーゲンでは、無事に生還した私た ちを、テレビカメラが迎えてくれた。

ようやく自宅に戻ったら、ありとあらゆる親戚や友人から、安否を気遣う電話が入っていたので、片っ端か らお礼の電話をした。私の声を聞き、感極まって泣きそうになる人もいたので、よほど心配してくれていたに違いない。「東京では不安だったでしょう。ドイツ に帰って来られて本当に安心したでしょう」と言われ、「東京は電力不足で混乱はしていても、放射能汚染でパニックになっている人はいない」と答えると、な ぜかいきり立つ人もいた。自分たちの方が、私よりもよく事情を知っていると思っているのだ。何も知らず、事態を極度に矮小化した日本政府の発表を鵜呑みに している私に、イライラしていたのかもしれない。「本当に恐ろしかった。やっと脱出できて、ホッとした」と言えば、皆、満足してくれたに違いない。



し かし、私は1カ月余の滞在の後、予定通り帰宅しただけなのだ。

予定の便がキャンセルになると、あとが面倒だから、帰宅できたことは大変うれ しいが、放射能から逃れてきたわけではない。そこで、「今の時点で、広範な汚染は起こり得ないから」と言うと、ある人は興奮気味に、「なぜそんなことが分 かるのよ。放射能は漏れていると日本の政府も言っている。大爆発の可能性も・・」と解説してくれ、また、ある人は、私が認識不足で、放射能の怖さを理解し ていないと思ったのか、「とにかく、あなたが戻ってきてよかった」と、私の言葉を無視して話を終えた。



いずれにしても、皆 がテレビや新聞で仕入れた「事実」を私に教えようとし、チェルノブイリの例を挙げた。相手は私の持つ認識や情報が間違っていると思っているので、反論した ところで、らちが明かなかった。もっとも、ドイツ人相手に議論をしたところで、普段からたいてい私に勝ち目はないのだが。



一 方日本でも、最悪の事態ばかりを予言する人たちがおり、それを信じてさらに広めていく国民もいる。

日本政府は、「健康に影響を及ぼさない 量」と言うと、不安に思っている人々を刺激するので、それさえ言いにくいのが現状ではないか。しかし、それを日本政府が声を大にして言わずに、誰が言って くれるのだ。

さらに私は、政府が、起こる可能性がゼロに近いような事象を敢えて言わないのは正しいと、今でも思っている。



そ うでなければ、ドイツの無責任報道と同じく、国民を恐怖に陥れるだけだろう。また、海外で広まっている間違った情報をもっと積極的に訂正しなければ、事故 の収拾した後まで、経済的な損失が残る可能性がある。政府はそれもしっかりやってほしい。



いずれにしても、事態の収束のた めに現地で努力している日本人の英知と勇気、そして、献身的な行動力を信じたいと、私は思っている。

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by aoyadom | 2011-03-23 21:35 | ドイツから